実はスマホにも使われている!進化を続ける化学強化ガラスとは?
ガラスの種類

強化ガラスには2種類の製法があります。
ひとつは「物理強化」というもので、通常のガラスを高温まで加熱した後に急冷する方法で、「熱強化」や「風冷強化」とも呼ばれます。そしてもうひとつが、「化学強化」というもので、「ケミカル強化法」や「イオン交換強化法」などとも呼ばれています。
今回は化学強化ガラスについて詳しくご紹介します。
(物理強化ガラスについては、別記事「衝撃に強い強化ガラス!その特徴と気を付けたい意外な弱点とは?」を参照ください。)
【化学強化ガラスとは?】
化学的な説明をすると大変難しくなってしまうのですが、化学強化ガラスの製法は、カリウムイオンを含む水溶液(硝酸カリ溶融塩)を加熱したものに、ナトリウムイオンを含んだガラス(ソーダ石灰ガラス)を浸すことで、イオン交換が起こりガラスの表面が強化されるというものです。
ガラス表面が強化される原理としては、「圧縮応力」を生じさせているという点では物理強化と同じです。
違うのはそのガラス表面に及ぶ応力の「深さ」です。
化学強化ガラスはその深さが10~100μmと非常に浅いです(物理強化ガラスは約0.3㎜)。
それによって物理強化ガラスとは違った性質を持っています。
【化学強化ガラスの性能】
・強度の高さ
物理強化ガラスの強度が通常のフロートガラスの3~5倍程度なのに対して、化学強化ガラスは5倍以上の強度があると言われています。
・後加工が可能
物理強化ガラスはカットや穴あけなどの加工が一切できませんが、化学強化ガラスはそういった加工も可能です。通常のガラスと同じように加工ができるとお考えください。
・割れ方は普通のガラスと同じ
物理強化ガラスは一か所の衝撃で瞬時にガラス全体が砕け散るように割れます。化学強化ガラスは通常のガラスと同様に衝撃を受けた部分からヒビが入るように割れます。
・厚さや形状の自由度
化学強化ガラスは非常に薄く作ることができます。物理強化ガラスの板厚は3.2㎜が限界値とされていますが、化学強化ガラスは1㎜以下の厚さにするも可能で、さらに曲げたりたわませたりしても割れにくいという特徴があります。薄く作れるので製品としての軽量化もしやすいです。
・自然破損しない
物理強化ガラスは強い圧縮応力が働くため、自然破損の可能性があります。そのためフィルム貼りなどの対策が必要な場合があります。一方の化学強化ガラスは自然破損の心配は一切ありません。
【化学強化ガラスの用途】
化学強化ガラスの技術自体は古くから用いられていて、時計のカバーグラスやコピー機の天板ガラスなどに使われています。
最近ではスマートフォンへの採用が広がり、注目を集めるようになりました。
スマートフォンのカタログに「ゴリラガラス」と書かれているのを見たことはありませんか?これは米コーニング社の化学強化ガラスの商標ですが、非常に割れにくいガラスとしてスマートフォンに採用され、近年にわかに有名になったガラスです。
各メーカーの化学強化ガラスの開発競争も進んでおり、イオン交換の組成を改善することでより一層薄く、かつ高強度なガラスパネルが作れるようになってきています。
スマートフォンユーザーの悩みである「画面割れリスク」や「重量感」を解決してくれるのが、化学強化ガラスなんですね。
スマートフォンの需要はまだまだ続くことと思いますので、化学強化ガラスのさらなる進化にも期待したいところです。